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アニメの感想/考察中心に、長文を記録しておきたくなった時に記録するブログ。劇伴音楽関連の話題が多いかもしれません。

響け!ユーフォニアム2 第2,3話をサウンドトラックで振り返る-劇伴音楽使用シーンまとめ

TV版響け!ユーフォニアム2本編でのサウンドトラック(劇伴音楽)の使用シーンについて、

どういうシーンでどのBGMがなったのか?

を各話ごとに整理していこうという記事です。

曲をまとめながら、各シーンを振り返ったり、選曲の仕方について考えたりしていきます。



この記事では、第2話と第3話を振り返ります。
前回第1話の振り返りはこちらの記事からどうぞ。
次回第4話、第5話の振り返りはこちらの記事からどうぞ。

第2,3話 ストーリー-サウンドトラック収録曲対応表

今回は第2話「とまどいフルート」及び第3話「なやめるノクターンです。劇伴使用シーンのまとめは以下の画像のようになりました。 f:id:r_lin:20171015183021p:plain

[説明]
鳴り始め・鳴り終わりは、各話開始時点から測った時間です。

曲番号は、 TVアニメ『響け!ユーフォニアム2』オリジナルサウンドトラック「おんがくエンドレス」に準拠し、
(ディスク番号)_(トラック番号)
を意味します。 例えば"1_5"なら、「おんがくエンドレス」のディスク1の5曲目を指します。



プール回、合宿回と楽しそうなイベント2連発に当てられた2,3話ですが、久美子が様々な人の思いを拾い集める気の休まらない話となりました。

第2話「とまどいフルート」

BGMをピックアップして振り返ります。

プールと「夏の到来」

吹奏楽部員がプールに集結するシーンの「夏の到来」は、今回初登場のBGMです。

夏の到来

夏の到来



フルートの音なども混じった、南国風の楽しいBGM。まさに「皆でプールに来ました!」ということをわかりやすく伝えるためのBGMと言えそうです。
響け!って結構こういう分かりやすく場面や場所の切り替わりを示すためのBGMが少ない気がします。むしろ複数の場面/場所をつなぐような使い方や、主人公たちの感じている空気感に合わせて曲を鳴らしたりというものが多い気がします。

ですから、こういう「プールに来たぞ!」とプールの楽しさを前面に押し出したような使い方は、個人的には安心感を覚えます。ストーリー的にもお盆休みで、練習に一息つくというタイミングですから、やっぱり見ている方にも安心感が欲しいですよね。


まあその後すぐに希美と出会ってシリアスに突入するわけですが…(笑)

希美の気持ちと「背中を押すもの」

ということで、プール回/水着回といえども即座にシリアスに突入するのが響け!らしいですね…。
希美が部活に戻りたい気持ちを久美子に伝えるシーンでは、「背中を押すもの」が使われました。

ピアノのソロから始まって途中から弦楽器も入って厚みを増していく、暖かい曲です。

背中を押すもの

背中を押すもの



吹奏楽が好きな事、1年前のつらい思い、自分辞めた次の年には関西大会にまで出るようになった皮肉、それなのにあすかに「戻ってもプラスにならない」と拒否された事、これらを語る希美にはやはり同情を禁じ得ません。
希美が握りしめている缶による演出も面白かったです。ベンチに腰を据え、缶の口を開けると同時に、希美は口を開けてあすかとの過去を語り始めました。「背中を押すもの」のシーンでも、目元を拭う希美と、缶からしたたり落ちる水滴が印象的です。原作小説でも似た演出はありましたが、缶の代わりにペットボトルでした。

第3話「なやめるノクターン

BGMをピックアップして振り返ります。

食堂でのあすかとの会話と「運命という必然」

久美子が夜の食堂であすかから希美を復帰させない理由を聞くシーンは、「運命という必然」がBGMとして使われました。
これも、今回初出の曲です。

運命という必然

運命という必然



久美子は、みぞれには希美にトラウマがあるという事実を告げられます。
あすかの口から真相を知るものの、それはどこかやりきれない真相で、聞いたはいいものの希美に伝えるべきかわからない。そんな心情をなぞるかのようなピアノソロ曲です。思い悩む久美子のカットから、楽しげな花火のシーンへ切り替わるギャップが、より久美子の中での葛藤を浮き立たせるような気がします。

コップの水に映る久美子の顔は何を表しているんでしょう…

花火と橋本の話と「人生の流転」

花火のシーンで久美子が橋本から亡くなった奥さんの話を聞くシーンでは、「人生の流転」が流れます。

人生の流転

人生の流転



この曲は橋本から久美子が滝の話を聞くシーンに流れていますが、鳴り始めの部分は、久美子が麗奈に滝へ話しかける事を促すシーンに該当します。橋本の話を聞いている間も、滝と麗奈の姿が度々画面に映し出されます。
奥さんの真実を知っている橋本の滝への思い、それを知らない麗奈の滝への思い。二人の人物の滝への思いが対比され、どうにもやりきれなさを感じるようなシーンでした。久美子も同じような気持ちなのでしょうか。


こんなに真面目に2人の滝への思いが表れるシーンにもかかわらず、
野口ヒデリ「なんですかぁ、これぇ。」
という中の人ネタは正直ウケました。

両話通して感じた事

思いを集める久美子とBGM

この第2,3話は、プールや合宿というイベントを通して、久美子が人々の気持ちを聞き集めるというストーリーです。劇伴音楽も、久美子が拾った人々の思いを彩るようにつけられています。

BGMと、久美子が聞いてきた事柄の対応をリストアップすれば、


  • 第2話「郷愁から芽吹くもの」「背中を押すもの」 - 希美のあすかや部活への思い

  • 第2話「吹き抜ける風のように」 - 夏紀の希美への思い

  • 第2話「陰る心」 - みぞれのコンクールへの思い

  • 第3話「人生の流転」 - 橋本、麗奈の滝への思い

  • 第3話「平穏なる日々」 - 優子のコンクールへの思い

  • 第3話「吹き抜ける風のように」 - 麗奈のコンクールへの思い

  • 第3話「響け!ユーフォニアム(朝もやver)」 - あすかの曲に込めた思い


と、久美子の心のキャパオーバーが心配になる量です。

あすかだけが異色ですが、「幾重にも重なった感情が込められているようだった」とあるように、久美子は確かにあすかの思いをユーフォの旋律に感じています。この時点ではそれが誰に向けられたものかが久美子には分からないようになっているのが、あすか編へつながる謎として残されています。あすかのユーフォ演奏シーンについては、劇場版の感想記事で詳しく書きましたのでよければこちらも。


話がそれましたが、このように久美子が受け取る人々の思いには必ずBGMがついてくることがわかります。
次回以降もこのようなシーンはあると思うので、注目していきたいと思います。

「落ちきった心情」「陰る心」のシンセ音(2)

前回も少し取り上げた、輪郭のないシンセ主体の曲の使われ方についてです。
この「輪郭のあいまいさ」がどのように生かされていたかを今回も見てみました。

陰る心

陰る心


第2話でみぞれと久美子が二人で話すシーンでは「陰る心」が、第3話でみぞれが橋本にソロを注意されるシーンでは「落ちきった心情」が使われていました。

この2シーンは共にみぞれの内面に関わるシーンでした。部活を続ける理由が分からない、ソロもどう感情を込めていいか分からないという、みぞれの宙ぶらりんな内面が曲に表れているようです。
みぞれがこうなっているのは、やはり希美という存在=楽器を続ける理由と言える人物、が部活から消えてしまったことによるでしょう。
部活を続ける目的もソロを届けるべき相手も曖昧なまま部活に存在しているみぞれの在り方が、輪郭の曖昧なシンセ音と非常に相性が良いような気がします。



第3話の、食堂であすかと希美の話をするシーンでも「陰る心」が使われていました。
こちらではみぞれは関係ありません。希美について考えを巡らせる様子、不穏な空気感が表現されていると感じました。第1話でも似た様な使い方をされていたと思います。
こちらは、ぞわぞわもやもやした空気感の表現のために使われた音楽だと考えられます。



あまり一般的に言えることはまだありませんが、「落ちきった心情」「陰る心」のシーンはやはりかなり印象に残りやすいものが多いです。





次回は4,5話を見ていくつもりです。 -> 第4話、第5話

2年生編完結+関西大会を、どのように音楽が彩るのか。

r-lin.hatenablog.com