響け!ユーフォニアム2 第4,5話をサウンドトラックで振り返る-劇伴音楽使用シーンまとめ
テレビアニメ響け!ユーフォニアム2 本編において、
どういうシーンでどのBGMがなったのか?
を各話ごとに整理し、各シーンを振り返ります。
今回は第4話、第5話を振り返ります。
前回(第2話、第3話)はこちらからどうぞ。
次回(第6話、第7話)はこちらからどうぞ。
今回は、劇伴音楽に関連した良い演出もいくつか見つけられました。
(→目次番号2-4、3-4などに該当します。)
第4,5話 ストーリー-サウンドトラック収録曲対応表
今回は第4話「めざめるオーボエ」及び第5話「きせきのハーモニー」です。劇伴使用シーンのまとめは以下の画像のようになりました。 ※鳴り始め・鳴り終わりは、各話開始時点から測った時間です。
曲番号は、 TVアニメ『響け!ユーフォニアム2』オリジナルサウンドトラック「おんがくエンドレス」に準拠し、
(ディスク番号)_(トラック番号)
を意味します。
例えば"1_5"なら、「おんがくエンドレス」のディスク1の5曲目を指します。
[注]今回から登場するⅠ_1_28のようにローマ数字のⅠがついた番号は、響け!ユーフォニアム第1期のサウンドトラック「おもいでミュージック」からの使用曲となっています。
いよいよ希美とみぞれの物語のクライマックスと決着、そしてそのまま関西大会へとなだれ込む、かなり密度の高い2話です。
ユーフォ第2期の中でも、どちらもかなり好きな話数です。
第4話
みぞれを探す久美子と優子、「張り詰めた糸のように」
久美子と優子がみぞれを探して校内を駆け回るシーンでは、第1期のサントラから「張り詰めた糸のように」が使われました。
「何が起こっているのかわからなかった。」
という久美子のモノローグとともに始まるシーンです。
久美子は走りながらも、今さっき起こった出来事や色々な事を回想していて、まだ状況の整理がついてない様子がわかります。しかしとにかくみぞれを探さなければならないという焦燥感から、体を動かし一つ一つの教室を回っていきます。
押し引きするピアノの音がなんともいえない不安感を煽っていいですね。
久美子の辿りつく、みぞれのいる教室に差し込む太陽でできる光と影がとても好きです。見つかったみぞれはとても陰の深い場所に身を潜めています。
みぞれが語る過去と「落ちきった心情」
みぞれが、希美との出会い、去年のこと、そして楽器を続ける理由を久美子に語るシーンでは「落ちきった心情」が使われています。
もしもこの「サウンドトラックで振り返る」記事を第1話から読んでいただいているモノ好きな方がいましたら(ありがとうございます)、そろそろ毎度おなじみとなってきたこの曲です。
ここも「久美子が部員から思いを拾い集めていく」という前回からの流れに乗ったシーンとも考えられるので、やはり劇伴音楽が鳴るんですね。
「なんのために吹奏楽部にいるのかわからない」という、みぞれの存在目的の曖昧さがこの曲に表れているように感じるのは、第2,3話の記事でも言った通りです。
"希美にとって自分はただの”友達の一人”なんだという事が怖い"
というのがとても強烈でした。みぞれが感情を向けるべき相手は希美ただ一人であるのに、希美にとってそういう人は自分以外にもたくさんいて、希美の気持ちが自分には向いていないのが怖い。きれいな感情とは言い難いような、純粋だけれどとても曲がった気持ちの向け方だと思いました。
これを考えると、希美から自分へ向けられる言葉をこの後のシーンでダイレクトに受け取れたのが、みぞれにとって救いになったなあ、と思います(後述)。
優子とみぞれの対話と「吹き抜ける風のように」
しかし一方で、明らかにみぞれを気にかけてくれている優子相手に「私には希美しかいないから…」などと言ってしまうみぞれ。こちらの二人にも似たような噛み合わなさがみられますね……。このシーンでは「吹き抜ける風のように」です。
しかし、みぞれが自分よりも希美を見ているとわかっていても、その心の壁を突破するように言葉を投げかけ続けるのが、優子らしいところ、優子の強いところだと思います。
「希美にとって自分は”友達の一人”だ」という事実を怖がり、自ら壁を作ってしまう弱さをもったみぞれとは、正反対と感じます。しかし、だからこそみぞれを引っ張っていけるのは優子なのでしょう。
教室の陰にいたみぞれを優子が日の当たる方へ引き上げる演出はとても印象的でした。優子によってみぞれは、日の当たる、希美との対話の舞台へ引き上げられました。
ここまでしてあげても優子より希美なのがみぞれ。もはや諦めろ優子。
希美とみぞれの対話と「静謐なる心」
本話のクライマックス。
希美とみぞれの対話では、「静謐なる心」が流れました。このシーンが初出の曲です。
どうして部活を辞めるときに何も言わなかったのか、その誤解が解けるシーン。そして、希美からみぞれへ、直接気持ちが伝えられるシーンです。
今まで希美へと気持ちを向け続けてきたみぞれが、希美から自分へ届けられた気持ちを受け取るシーン。
これは泣きます。
希美自身の口から、みぞれのソロ聴いたよと、みぞれのオーボエが好きなんだと、キュンとするんだと、みぞれに言葉が届きます。
そして希美自身の手で、オーボエがみぞれへと渡ります。
「希美→みぞれ」という気持ちの向きがこれでもかというほどに表れる、まさに第二期の山場の一つです。
希美の「キュンとしてさ!」というセリフに合わせて「希美→みぞれ」へとカメラが向かうのがとても印象的です。
他でもない、楽器を続ける理由である存在から、自分の楽器の音への思いを言葉で伝えてもらう。みぞれにとってこれ以上があるでしょうか。
また、このシーンの良さはこの「静謐なる心」という曲自体にもあると思います。
輪郭の薄いシンセサイザーの音に、希美の消失によって自分が部活にいる目的が曖昧になったみぞれの内面が表れているという可能性を、第2,3話の振り返りの最後に書きました。
しかし、この輪郭の薄いシンセの音の雲の中に、ポツンポツンとくっきりとした輪郭のピアノの音が響いてくるという始まり方をするのが、「静謐なる心」という曲なんです。
これはみぞれの宙ぶらりんな心の中へ希美の言葉がはっきりと届いてくる様子を曲にしたように聞こえないでしょうか。
このピアノの音は希美から届いた言葉であって、みぞれが吹奏楽部で吹き続ける目的をもう一度与えてくれるのです。
曲の構造自体に、このシーンの良さが反映されてるとおもいませんか?
と、かなり深読みしていますが…(笑)、でも「静謐なる心」がこのシーン専用のBGMだったら、あながち間違いでもないかもしれないです。
このシーンのために、これまでみぞれのシーンにシンセサイザー主体の曲を選曲してきたのかな〜などと、考えを巡らせてしまいます。
とにかく、まさにこのシーンを体現したような曲であると思います。ちなみに筆者はこのシーンを見ると毎回目が潤みます。
第5話
音楽モノとしてのこだわりと「三日月の舞」、そして第1期のサウンドトラック
第4話が”青春モノ”であったのに対し、
第5話は打って変わって完全なる”音楽モノ”の作品として描かれていました。
4話までにあった人間関係をふまえつつも、あくまでもスポットライトはコンクールそのものに当てた関西大会回でした。
コンクールの控室での音出しの様子や、舞台裏で待機するときに聞こえてくる前の団体の曲など、すごくリアルにこだわられていると思います。
また、三日月の舞fullのシーンはやはり圧巻です。
演奏シーンを見ていると、メインキャラだけでなく全ての部員一人一人が主役なのが吹奏楽部だという、第1期の頃に感じたこのアニメの精神を思い出すようです。
一人一人を次々に映し出すカメラワークを見ていると、部員はもちろん、滝先生もまた部員と対等な存在として描かれているように思えます。
2期ではメインキャラ間の少数の人間関係にどうしても着目しがちでしたが、「部員全員に物語がある」というこのアニメの精神を、今回の演奏シーンに再び感じることができました。
一人一人に物語があるのは、楽譜に貼ってある写真にもわかりやすい形で表れています。
久美子に麗奈との思い出があるのと同じく、クラリネットパートには新山との思い出が、パーカッションパートには橋本との思い出が。そして野口ヒデリには田浦愛衣との思い出が(笑)。
そこにはアニメで描かれたか否かの違いしかなく、全員が対等なのです。
また、ストーリー-サウンドトラック収録曲対応表を見ていただくとわかりますが、第5話で特徴的なのが、吹奏楽曲以外の劇伴音楽を全て1期のサントラの曲からとってきている事です。
これが直接どう”音楽モノ”としての表現につながるかはっきりとしたことは言えません。しかし、今回徹底的に1期の曲から選曲されているのを見ると、これまでの話数とは雰囲気を変えようとしているのを感じます。
個人的には、上で述べたように「一人一人が主役だ」という第1期に強く出ていた雰囲気が、コンクール回と相性が良いのかな、なんて思っています。
ということで第5話は、劇伴を第1期のものにガラッと変えて、気持ちを新たにコンクールを描いた回となっています。
迫り来る本番と「一途な瞳」
関西大会前日練習の様子には、「一途な瞳」が当てられました。
第1期でも本番直前の様子を描くときに度々使われる、「いよいよ本番だぞ!」という気持ちを煽る曲です。
これが鳴るとだんだんと本番の足音が近づいてくる気がする、決戦前BGMです。
練習シーンの滝先生の
「もう一度言います。本番です。」
というセリフの緊張感がたまりません。
舞台袖で待つ北宇治吹奏楽部と「ダッタン人の踊り」
前団体の演奏曲が、舞台袖で待機中の北宇治部員にも聞こえてくるシーンです。
正確には、サントラのダッタン人は南中の演奏ver.なので、このシーンの演奏はサントラ未収録ということになります。
つくづく、みぞれと希美の決着つけといて良かったな〜と思うシーンですよね(笑)あのままだったらみぞれがどうなっていた事か。
舞台袖では静かにしなければいけませんから、自然とみんなの声もひそひそ声になっています。
好きなのは、優子から始まってみんなが次々に手をあげ、気持ちを一つにするシーン。優子、次期部長だなあ。
でも優子の次に手を上げて流れを作った滝野純一くんも褒めてやって下さい。
でも舞台袖だからもうちょっと声のボリューム落とそうね、ともツッコんでしまうシーンです(笑)
また、裏で流れている「ダッタン人の踊り」が、いい感じにストーリーを盛り上げる劇伴音楽として機能している気がします。
「ダッタン人の踊り」のクライマックス部分では、優子に続いて皆が次々に手を上げていき、これに従って曲も盛り上がっています。
そして、ジャン!と「ダッタン人の踊り」が終わると同時に、香織先輩の「行きましょう、」というセリフが始まり、「みんなで全国へ!」というセリフと重なるように、拍手が聞こえてきます。
この拍手は当然前の学校の演奏に向けてのものですが、私には北宇治の全国への一歩を応援する拍手のようにも聞こえました。
これは、前団体の演奏を、シーンを盛り上げるための劇伴音楽として使ってしまうという演出にも聞こえます。すごく面白いと思いました。
全国大会代表の発表と「はじまりの旋律」
全国大会の代表を発表するシーンでは、「はじまりの旋律」が流れました。
放映当初、「結果発表は来週か〜」と思わせつつのまさかのCパートでした。
やはり、コンクールの結果発表シーンといえばこの曲ですね。松本先生の涙で泣き、野口ヒデリと秀一でなごみ、立ち上がって叫ぶ後藤で笑いました。
実は、音楽が鳴り始めるタイミングが第1期最終回の結果発表シーンと違っています。
第1期の最終回では金銀銅の発表の時からすでにBGMがなったのに対し、今回は金銀銅の発表ではBGMは鳴らず、全国大会代表の発表から「はじまりの旋律」が鳴り始めます。
これはやはり、部員の中で「全国大会に行く」という目標が現実味をもっている事の表れだと思います。 金だけでは満足できない、代表になるかどうかが本当の勝負だ、という第1期からの部員の意識の変化を、劇伴の鳴り始めによって表現していると考えられます。
みぞれの物語にもこのシーンで決着が着きます。
「たった今、好きになった。」
みぞれもまた、救われたんですね。
ということで、盛りだくさんすぎて少々長くなった今回ですが、このへんで終わりたいと思います。おつきあいありがとうございました。
次回へ続く。 -> 第6話、第7話はこちらから
TVアニメ『響け!ユーフォニアム2』オリジナルサウンドトラック「おんがくエンドレス」
- アーティスト: 松田彬人,北宇治高校吹奏楽部
- 出版社/メーカー: ランティス
- 発売日: 2017/01/11
- メディア: CD
- この商品を含むブログ (10件) を見る
TVアニメ『響け!ユーフォニアム』オリジナルサウンドトラック おもいでミュージック
- アーティスト: 松田彬人,北宇治カルテット,TRUE
- 出版社/メーカー: ランティス
- 発売日: 2015/07/08
- メディア: CD
- この商品を含むブログ (9件) を見る