アニメと日々を見聴きする。

アニメの感想/考察中心に、長文を記録しておきたくなった時に記録するブログ。劇伴音楽関連の話題が多いかもしれません。

【イベントレポ】『響け!ユーフォニアム』4回目だよ!宇治でお祭りフェスティバルに行ってきました

一週間前の話になりますが、京都府宇治へ赴いて「『響け!ユーフォニアム』4回目だよ!宇治でお祭りフェスティバル」に参加してまいりました!それにしても、もう4回目になるのですね。

イベント会場である宇治文化センターまでは、駅から徒歩で歩きました。2年前のイベント参加時に駅からバスに乗ろうとしたらユーフォファンで埋め尽くされていて乗れなかった経験から、毎年徒歩にしています(笑)。
毎度のことながら、6月初頭の暑さの中で会場まで歩くのは結構しんどいです。軽く熱中症になりかけるので水分補給は大切ですね…。

ようやく到着するともう入場が始まってました。宇治文化センターの光景には実家のような安心感を覚えます。 しばらく涼んでから会場の中へ。今回席はかなり遠めでした…が、参加できただけ幸せです。


そしていよいよイベントが始まるのです!北宇治カルテットの4名+なかよし川コンビが登場。衣装被りでつかみはバッチリ(笑)。

ここからは記憶のある範囲で書いていきたいと思います。

まずは劇場版次回作の情報解禁がありました!

anime-eupho.com

「誓いのフィナーレ」

かっこいいサブタイトルだ…。「誓い」とは何の事なのか…フィナーレとは何を指すのか…。妄想が膨らみます。
キービュジュアルの躍動感がすごいです。なんか今にも楽器でバトル始めそうなかっこよさがありますよ。久美子の他には4人の北宇治新入生が顔を明かしています。
目を引くのはやはり、真ん中であたかも主人公のように居座っているユーフォニアム新入生・奏。一期の時の久美子のポーズと同じだと話題になっていますね。この佇まいだけでも奏らしさが滲み出てくるような…いやこれ以上は原作ネタバレになるからやめとこうかな。とにかくこの奏を見て期待感がどんどん増してきました。
安済知佳さんの「トランペットは…?」で会場爆笑。みごとに低音オンリーですからね〜(笑)。でもトランペットにも重要な新入生がいるはずなんだけどな…?そこらへんどうなるんでしょう。第二楽章は本来テレビシリーズで1クールやっても良いくらいの密度だと思いますし、劇場版にまとめるとなると結構エピソードの取捨選択も多くなってくるのでしょうか。しかしキービジュアルだけだとなんとも分からないですよね。

公開は2019年春ということで、待ちきれない!正座して続報を待ちましょう。


しばらく「リズと青い鳥」の線が細くてガラスのように繊細なキャラデザに触れてきて、久しぶりこうやって「響け!ユーフォニアム」シリーズのキャラデザを見ると、力強さとか芯がある感じの印象を受けました。久しぶりにこの世界観に帰ってきたな、という懐かしさすら感じます。

そして第三回吹奏楽コンサートの開催も決定しました。実は私は響け!の吹奏楽コンサートはまだ見に行った事がないんですよね。今回はきっと組曲リズと青い鳥」とかも含めてやるのだろうな…と想像してます。一回行ってみようかな…。



情報解禁が終わると次は企画コーナーへ。

オンリーワン個性対決!

人と被ったらダメなやつ。お題はたしか、

・九州の県
・赤いフルーツ
・好きなカレー
・Aから始まる英単語

一番印象に残っているのは、英単語のお題で安済さんの出した"Anknown"。本当はUnknownでしたというオチ。
スタッフさんも一瞬ピンポン鳴らしてましたよね…?(小声)
artとかaliveとかオシャレ単語がポンポン出てきてすごいな〜とか思ってました。自分はとっさにappleくらいしか出てきませんでした(笑)。

目利き対決

格付け的なやつですね。」言っちゃったよ。お題は、

・和紙
・お茶
・皿
・アイス
・ペン

多分宇治っぽいもの推しで来てるんですかね。私も影響されてお土産でお茶を買いましたよ。
お茶とかアイスとかの食べ物系の時は、ハッキリ6対0で意見が一致していたので面白かったです。やっぱり高価なものって美味いんだなあ…。

持ってるか対決

ロシアン的なものをやって"持ってる"人を探すゲーム。

・トランプでジョーカーに当たる人
・めっちゃ甘いお茶に当たる人
・押すとピンポン鳴るボタンに当たる人
… などなど、全部は覚えてないんですけどシュールなのもまじりつつという感じのコーナーでした。ロシアンといってもわさび寿司的な事はやらない優しさ。

朗読コーナー

キャスト6名による書き下ろしストーリー朗読コーナー。それまでロシアン的なことやっててもスッと演技モードに雰囲気が切り替わりました。
内容は、新入生歓迎のための演奏曲目を考えるというもの。「暴れん坊将軍」はマンネリ化してるから別なのを考えようよ〜と話すなかよし川の会話から物語は始まり…。
詳細なところは覚えてないのであらすじはこれくらいなんですけど、なかよし川×ハッピーアイスクリーム/だいすきのハグ、滝命な麗奈など楽しい要素詰め込みまくった朗読劇でした。ああいうコミカル展開になると葉月がひたすらツッコミに徹することになるのだなあ…というのも発見でした。

話は変わるんですが、みぞれの新歓の様子とか朗読劇で見てみたいな〜とか思いました。あの調子でどうやってダブルリードに3人も入れられたのか不思議でなりませんので(笑)。南中の他の3人あたりも絡ませて朗読したら絶対楽しいと思うんですよね。という独り言でした。

「ディスコ・キッド」の名前が出て来たのは吹奏楽ファンへのサービスでしょうか。私もそこまで吹奏楽曲詳しくは無いですが、この曲は結構有名なこともあり知っていました。だいぶ昔のコンクール課題曲だったようですね。こんな演奏会向きのノリノリな曲が課題曲だったのですね。
ぜひディスコキッドを演奏している北宇治が映像化されないかな…などと淡い期待を抱くのでした。新歓とか、定期演奏会の様子とか、ぜひ映像化してほしいです。OVAとかでもいいんで!


そんなこんなでイベントは終わりをむかえ、お別れの挨拶へ。
去年のイベントではここで2本の新作劇場版決定がサプライズで発表され、観客席もキャストの皆さんも興奮と動揺とに包まれてとんでもない事になったわけですが…


2年連続でサプライズはさすがにありませんでした!
去年のことがあって少しハードルを上げすぎていた所はありますが、まあこれが普通ですよね(笑)。


キャストのどなたかから「2年生編があるってことは3年生編ももしかしたら…」という発言がありましたが、3年生編の実現への期待はおそらく多くの人が共通して持っているでしょう!
響け!ユーフォニアム」シリーズ、今後の動向がまだまだ楽しみです。




イベントの前後には宇治周辺を中心に、聖地巡礼してきました。

f:id:r_lin:20180610105730j:plain 京アニショップ。移転してたのを知らず最初はひっかかってしまいました。

f:id:r_lin:20180610105855j:plain 宇治川水管橋ではたまたま自分一人になったので、サントラから「響け!ユーフォニアム ~久美子と二人きり Ver.~」を流しながら佇んでみました。この空間に二人はいたのかと、感慨にひたりました。夕暮れだったらなお良かったですね。

f:id:r_lin:20180610105934j:plain 喜撰橋近辺。あの橋の下あたりで久美子と麗奈が花火を見ていたのですね。

f:id:r_lin:20180610110008j:plain 観流橋からの眺め。トランペットを吹く麗奈に見えていたのはこんな光景だったのかな。



こののどかで静かな風景があったからこそ、「響け!ユーフォニアム」という作品が生まれたのだなあという思いを改めて確認できました。ユーフォを生んだこの街の雰囲気や風景を壊さないように、この街や作品とつき合っていく必要があるかもしれません。

5月 よく聴いてた曲たち

5月によく聴いてたアルバムやら曲やらを雑記としてまとめます。
それと、ちょっとリズと青い鳥についても一言二言最後に書いてます。

girls,dance,staircase(リズと青い鳥 サウンドトラック)

reflexion,allegretto,you

reflexion,allegretto,you

  • kensuke ushio
  • アニメ

今月はリズの月でした。フルート反射のシーン「reflextion, allegretto, you」はほんとうにいい曲です。全てを温かく包み込んでくれる感じがします。
冒頭の曲が環境音を含めて収録されていたのは本当に驚きました。

Fate/stay night [Heaven's feel] original soundtrack 1

Fate/stay night [Heaven's feel] 第1章のBDに特典としてサントラがついて来ます。やっぱり格好いいですね。アサシンvsランサーのBGMの疾走感がすごいです。

特典の舞台挨拶映像では、序盤30分間のこだわりが語られていました。桜と士郎の平和な時間をいかに長く体感してもらうか、その工夫の一環として劇伴の曲数も抑えられていたようで、興味深かったです。

the Garden of sinners -劇場版「空の境界」音楽集-

FateヘヴンズフィールのBDを買う

→ufo×型月×劇場版×梶浦由記

空の境界

と辿ってきて久しぶりにこのアルバムに行き着きました。

この音楽集で私が一番好きなのが、第一章に相当する「俯瞰風景」のトラックなんですよね。どこか和風も感じさせつつホラーっぽい音使いもしつつ、綺麗で感傷的でスタイリッシュで…とあらゆる音の色彩が聴こえて来ます。本当に何回聴いても飽きないトラックです。

Steve Reich: Tehillim & The Desert Music、そしてリズと青い鳥

Tehillim: I. Psalm 19:2-5

Tehillim: I. Psalm 19:2-5

  • Alan Pierson & Ossia
  • クラシック

リズと青い鳥が公開されている

牛尾憲輔

→牛尾さんが影響を受けたアーティスト

Steve Reich

と辿ってミニマル音楽を代表する作曲家のSteve Reichにたどり着いてしまいました。 「Tehillim」は女声ボーカル4人を中心に据えたアンサンブルによる曲で、小難しい感じがなく純粋に響きを楽しめる楽曲です。同じアルバムに入っている「The Desert Music」も、非常に親しみやすい響きを持った楽曲です。こちらはTHE・ミニマルという感じですね。


ところで牛尾さんがReichに影響を受けたというのは、こちらのインタビューで言及されていることです。ここで触れられている影響とは、Reichのマレットの響きとかフェイジングの考え方とか、そういう所です。
聲の形」サントラや「the shader」といった牛尾さんのアルバムとこのReichの楽曲を聴き比べてみると、「Tehillim」とか「The Desert Music」のような響き・方法論がきっと牛尾さんの中に潜在的にあるのだなと確かに感じられます。


例を挙げれば、「リズと青い鳥」の希美とみぞれのBPMを100と101にして互いに素にずらして…といった考え方は、まさしくReichのフェイジングの考え方に非常に近いものがあると思います。なぜなら、フェイジングはズレを生み出す事で豊かな音楽の広がりを生み出していく技法だからです。*1 Reichの「Piano Phase」などは、まさにこのテンポを二人で微妙にズラす事で音楽を生み出すという手法がそのまま使われた楽曲です。

Piano Phase (1967)

Piano Phase (1967)

  • Edmund Niemann & Nurit Tilles
  • クラシック

だから私は、もしかしたら「リズと青い鳥」は"フェイジングの物語"なのかもしれないな、と思うのです。
ズレてるって、美しくて豊かだ。

*1:フェイジングについては、例えばこちら(https://www.operacity.jp/concert/interview/170301essay/)の記事に詳しかったです。

【感想】『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話』 - ネタバレ有り読後感

響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話』を読み終わりました。

リズと青い鳥を観終わったら読み始めようと思っていて、ようやく手を出すことができました。

まず一言で感想を言うと、とてもさわやかで晴れ晴れとした読後感でした。
北宇治の皆のなにげない日常のワンショットや、新しい未来へと向かう狭間で揺れる姿が、心を強く揺さぶってくれました。


特に印象に残ったのは、卒業に関連したエピソードの数々でした。
当たり前だった日常を抜け出して、新しい未来のステージへと渡っていく、その過渡期にある彼女達。その中で何を想い、何を伝えるのか。未来へと渡ってしまえば、すぐにでも脆く崩れてしまいそうな"今この瞬間"に向き合う彼女達の後ろ姿。
こういった物に、本当に本当に強く心を揺さぶられて、じゃあ自分は学生時代こんなに大切に一瞬一瞬を過ごせただろうか……と自省の念までもが引き出されて来ました。

確かにある、今この時 - やっぱり晴香が好きだ!

これを一番感じたのが「未来をみつめて」でした。P.103の文章に、ガツンと脳を揺さぶられたような気がしました。

晴香はあすかとの未来の関係性・距離感をきわめて冷静に予測しているんですよね。ああ、きっと自分とあすかは今以上にはならないんだろうな、って。
こういう感覚に私もとても共感できるところがありました。学生時代、顔を合わせれば一緒に雑談して、帰りも一緒に帰ることもあり……そんな"普通に仲の良かった"友達。それが一歩未来に進んだ時、嘘みたいに淡く自分の近くからフェードアウトしていってしまう事。
友達が友達で無くなってしまう未来への想いみたいなものが文章から滲み出て感じます。友情の密度、という表現がこれ以上無いほどスッと腑に落ちてきました。武田さんの胸のうちには、どんなものがあるのでしょうか。


この箇所を読んでいる時、つい聴きたくなった曲があります。それは2期のサントラの「特別とは何なのだろう」でした。

特別とは何なのだろう

特別とは何なのだろう

2期の第1話で、麗奈と花火を眺めるシーンのBGMなんですよね。あのシーンの時も、とても似た感情があったような気がします。久美子と麗奈は友達。それは今、誰がどう見ても確かな事なんです。でもふと未来に目を向けた時、例えば10年20年たって、"今この瞬間"が過去になっているだろう時。それでもまだ、久美子と麗奈の"友情の密度"は果たして保たれているだろうか。私を含め誰も分からないし、本人だって予測がつかない。それはとても怖い事だと思います。友情は永遠でないという事への恐怖は、このシーンからもとても強く感じます。



こういう恐怖に対して晴香が出した答えは、ほんとうに格好いいと思います。

でも自分たちは、今、確かに友達であり、部長と副部長とパートリーダーなのだという事。

自分は晴香というキャラがずっと好きだったんですが、もう今回のお話でまた一回り株が上昇してしまいましたよ。
今、友達であることを刻みつけようと。やがては泡のように消えてしまうかもしれなくても、今確かにこの友情があったんだという事を噛み締めようと。今確かに友達である事を最後の最後に謳歌しようという、晴香の意地らしさ。
晴香の心はとても勇敢で、もう決して1巻当初の泣き虫部長ではないと。そう確信した次第です。今を大事に生きる晴香の姿は、「響け!ユーフォニアム」シリーズを体現するものだと言ってよいと思います。テレビアニメシリーズも通して晴香という人間を見てきて、一番苦労を背負って、その分一番成長したキャラなんじゃないかと思います。



今を刻みつける晴香の生き方が現れていたのが、「そして、そのとき」にあったこのセリフだと思います。

「あったよ、いっぱい」

そう即答できる事がいかにすごいか。多分葵にとっても輝いて見えたかもしれませんが、私にとってもそうでした。自分は過去を振り返った時に良かった事が沢山あったと即答できるのだろうか。それほどに瞬間瞬間を大事にやれていただろうか。晴香の背中はとても大きく見えました。

友達と勉強会をする時間だってそう、友達と料理をしたり、たわいない悪ふざけをする時間だってそう。 気づいていないかもしれないけど、確かにあったその時間こそがかけがえのないものなんだよ、と感じました。

飛び立つ君の背を見上げる(D.C.、そしてFine)

別れの日は、いつもと少し違っている。でも、また明日からも続いていきそうな、そんな光景にも感じてしまいます。

飛び立つ君の背を見上げる(D.C.)

みぞれと優子の関係について。本当に良かった。良かった。。
優子は一年間吹奏楽部部長として振舞い続けて、ほんとにはち切れそうな中でやってきたのだと思いますが、今この時はみぞれの6年来の友人として、最後の時を過ごせているんだと思います。優子へのご褒美だと思います。
優子の最後のわがまま。いいですね。意地らしい。もうみぞれには背中を押す人はいらないのかもしれない。でも、今最後の時にもう一度それを確かめたいなって思ったのかもしれないです。
この部分では優子の表情の描写は特にないんですけれど、穏やかに微笑みながらみぞれの背中へ手を伸ばす優子の顔が文章から浮かびあがってきました。


それから手紙

こんなもんずるいでしょう。

こんな手紙見せられて我々はどうすればいいんだ!心臓が止まるかと思った。ずるすぎるので私が文章として記せる事がありません。この二人はいつまでも友達で有り続けるのかなあ。

飛び立つ君の背を見上げる(Fine)

そして音楽記号に導かれ再び本の冒頭へ。

4人の間で交錯する物語。それが何気ない描写や行動に潜んでいた事に、D.C.で"繰り返し"てきて初めて気づきました。

「ありがとう、希美」

という何気ない一文に込められたものもそうでした。「ありがとう」は、D.C.の前と後では全く違うものとして感じられます。

色々なものに一度決着がつき、そしてまた4人の別々の未来が始まっていく予感を感じる、さわやかで前向きになれるFine。
でも最後のシーンは夏紀と優子がいつものようにじゃれあっていて、それは明日以降もこれまでの光景が続いていきそうな希望を感じさせて。


別れや終わりに漂う儚さと希望、終わるものと続くもの。背反するかのような二つが背中合わせに共存した、本当にさわやかな読後感でした。
武田先生、彼女達をまた一歩未来へ進めてくれて本当にありがとうございます。




さて、この記事はここらへんにしときたいと思います。アンコンの話とか香織先輩の話とか新山先生の話とかせんのかい!と突っ込まれそうですが。全然久美子達の話の感想も書けてないんですよ。
でも、読んだ直後に一番残っていた気持ちが今回書いた事でした。自分の過去の体験も交えた共感もかなり強く、まずは素直な読後感としてこの文章を残しておきます。

文章化できそうな目処が経てば今回触れられなかった部分の感想も書いてみようと思います。特に香織先輩の手紙とかヤバすぎてどう受け止めたらいいのか…

リズと青い鳥・サントラ感想 - 作品世界への架け橋としての劇伴楽曲

牛尾憲輔さんによる映画『リズと青い鳥』サウンドトラック「girls,dance,staircase」を聴いた感想文が以下につらつらと続きます。

※映画本編のネタバレも含みますからご注意ください。

  • 離れて見守るための楽曲 - ビーカーになること
  • 我々がビーカーに居場所を得るために - 架け橋となる音楽
    • aquarium,eyes
    • linoleum,flute,oboe
    • decalcomanie,surround,echo
  • ライトモチーフ的な劇伴使用について
    • reflexion, allegretto, you

リズと青い鳥』のサントラを購入し、再生開始約5秒程で衝撃を受けた。
あの靴音や下駄箱の音や小鳥のさえずりまでもが、楽曲の一部として収録されていたからだ。

「作品世界の中で鳴っている効果音と思ってたかもしれないけど、あれ、音楽だよ」
そう主張されてしまったのだから。
あまりにも自然に、牛尾さんの楽曲は作品世界の中に始めから入り込んでいた。


サントラの1曲目「wind,glass,bluebird」を聴くと、あの靴音たちを音楽の一部であると主張することには一切の無理矢理さがなく、説得力があると感じる。
足音や靴箱の物音は、音楽を構成する1つの要素として時にテンポを刻み時にずれを生み、音楽的な響きとしてそこにある。風の音も、鍵盤の音も、足音も、対等な楽音としてコントロールされていた。


劇伴音楽というのは、普通は作品世界の中には存在し得ないはずのものだ。作品世界に居場所がある音というのは、セリフであったり効果音であったり、そういうものだけのはずだ。
しかし『リズと青い鳥』においては、効果音と劇伴音楽の垣根を取り払い、作品世界の中にも音楽の居場所を確保したかのように聴こえているのだ。


「効果音のように音楽を扱う」事は、非常に危ない橋を渡る事だと思う。それは、ともすればファンタジックだったりコメディタッチな印象を持たせてしまうからだ。*1うまく作用すれば印象的な演出にもなるが、一歩間違うと意図に反してコミカルになったり非現実的なシーンを作ってしまいかねない。
しかし「wind,glass,bluebird」では、"実写に近い"とまで評される『リズと青い鳥』のリアルな世界観の中で、そのバランスを取り切っている。*2


それでは、楽曲が作品世界に居場所を得る事が持つ意味とは何なのだろう?
色々考えてみた結果、それは我々観客と作品世界の間の架け橋を作る事になるのだろう、と思い至った。

*1:『映画音楽からゲームオーディオへ 映像音響研究の地平』(著:尾鼻 祟) という本がある。この第3章はとても面白かった。

*2:バランスが取れていたからこそ、我々は映画館で違和感なく鑑賞できたのだと思う。このあたりは、牛尾さん本人もインタビューでそれっぽいことを言っている。Mikiki | 特集「リズと青い鳥」 OST『girls,dance,staircase』二人の少女の繊細な関係性を牛尾憲輔が音像化。その儚く美しい世界観を映したコンセプト・ワークとは? | INTERVIEW | JAPAN

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4月 よく聴いた曲たち

4月によく聴いてたアルバムやら曲やらを雑記としてまとめます。

the shader, 聲の形 オリジナル・サウンドトラック a shape of light

frc

frc

やっぱり今月はこれを一番聴いてたかもしれない。ブログでも書いたので詳しくは省略。

Music for 18 Musicians

Music for 18 Musicians: VII. Section V

Music for 18 Musicians: VII. Section V

これもほぼ聲の形の影響で聴いてた。Section 5が好き。

interview with agraph - その“グラフ”は、ミニマル・ミュージックをひらいていく | アグラフ、牛尾憲輔、電気グルーヴ | ele-king

この記事を読んで聴きたくなった。聲の形の「frc」なんかはこの曲への意識がすごく強そう。ミニマル全然分からないけど色々探索してみるきっかけになっている。

トリカゴ

トリカゴ

トリカゴ

  • XX:me
  • アニメ
  • ¥250

ダリフラED。トリカゴ以外も含め、いい曲が非常に多い。テンポというかビートというかが落ち着いた感じで好み。安心感を与えてくれる。

The Rite of Spring (春の祭典)

Le Sacre du Printemps (The Rite of Spring): Adoration of the Earth (The Wise Elder)

Le Sacre du Printemps (The Rite of Spring): Adoration of the Earth (The Wise Elder)

クラシック。4月前半はなぜか分からないがこれをしばしば聴いてた。ストラヴィンスキー本人指揮のもの。

響け!ユーフォニアム2』オリジナルサウンドトラック「おんがくエンドレス」

郷愁から芽吹くもの

郷愁から芽吹くもの

やはり今でもよく聴く。シンプルで純粋なメロディーに安心感を抱く。「郷愁から芽吹くもの」は、さわやかな朝の散歩に合う。

Pines of Rome(ローマの松)

ボストン交響楽団小澤征爾さん指揮による。春の祭典聴いてた頃に同時によく聴いてた。やっぱり自分は派手なのが好きなのか。

『リズと青い鳥』感想【ネタバレ有り】

映画『リズと青い鳥』、ついに公開しましたね。
あの宇治での衝撃の製作発表からずっと、待ちに待ち続けてきました。

liz-bluebird.com

  • はじめに
  • 閉じた世界と、その外側
  • 剣崎梨々花 − みぞれの世界を開く存在
  • 見てはいけないものを見た
  • 音と音の境目
  • その他何点か

はじめに

本当に待っていて良かったと思えた映画でした。一本の映画としての完成度や精密さもさることながら、「響け!」ファン・原作ファンの1人としても存分に楽しめる一本でした。

90分という時間は短いように思えますが、実際観てみると常に高密度で映像と音とセリフとが降ってくるので、正直もっと長かったら集中力が持たなかったかもしれません。ちょうどよかったです。

「久美子の物語」であるはずの原作から視点を変え、希美とみぞれを世界の中心に置いて描いたらどうか。そのような大胆な挑戦をしようとしている様に見え、始まる前は正直不安と怖さが大きかったです。実際公開されてみると、観ててとても考えたくなる/語りたくなる映画でした。


この記事で感想を書いてみて、「全然思考まとまってないなこの人…!」と自分でも思います。

しかしこの映画を見た新鮮な感動の断片を少しでも"冷凍保存"しておきたい。まだ頭が整理されていないながらも、思いついただけのことを記していく次第です。

※ネタバレ有り感想です。ご注意ください。

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映画「聲の形」と牛尾憲輔さんの楽曲 - agraph「the shader」から受け継がれているもの

  • はじめに
  • 山田監督と牛尾さんが出会うまで
  • agraph「the shader」を聴いて
    • 「距離感」を作り出すという事
    • 曲の世界観、「同心円状」「影と光」
  • 聲の形』における牛尾さんの音楽
    • 「距離感」と「ノイズ」
    • 「光と影」
  • リズと青い鳥』への期待とまとめ

はじめに

なぜ公開から1年半以上経った今こんなタイトルで記事を書いているのか?

実は最近『聲の形』を再び見る機会があったのだが、かなり愕然とした。
「自分はなぜ公開当時、これを何回も観に行かなかったのか?」

ストーリーが重くてなかなか気軽に観に行ける作品じゃなかった…というのが正直な所だが、しかしやはり当時の自分はこの作品の魅力をあまり理解できてなかったのだと思う。


中でも、牛尾憲輔さんによる音楽の魅力が自分の中で一気に増している。
ピアノのノイズを積極的に取り込んだ柔らかい響き、聴覚障害という要素、周りを直視できない将也の内面…ストーリーと音響がマッチして一つの世界観を作り上げる。わかりやすいメロディーを聴くというよりはその響きを楽しむような楽曲の数々。つらい場面でもどこか包容感を覚えるような音楽。 牛尾憲輔さんによる楽曲がなぜこんなにもマッチするのか。

映画 聲の形 オリジナル・サウンドトラック a shape of light[形態A]

映画 聲の形 オリジナル・サウンドトラック a shape of light[形態A]

その根本にあるモノを見るべく、私は牛尾さんへのインタビュー記事をいくつかあたってみた。この記事では、それらの内容を元に

聲の形』で牛尾さんはどんな音楽を作ろうと考えたのか?
牛尾さんがagraph名義で出したアルバム「the shader」から受け継がれたモノは何なのか?
なぜ牛尾さんの楽曲は『聲の形』とマッチしたのか。

こんな事を自分なりに整理してみたいと思っている。


[参考にした記事一覧]
【1】音楽 | 映画『聲の形』公式サイト
【2】美しくやさしく将也たちの世界を包む、異例づくしの音づくり――映画『聲の形』音楽・牛尾憲輔インタビュー - Excite Bit コネタ(1/11)
【3】ラストの曲は、京アニ近くの河原で泣きながら思いつきました――映画『聲の形』音楽・牛尾憲輔インタビュー - Excite Bit コネタ(1/11)
【4】agraph「the shader」インタビュー (1/3) - 音楽ナタリー 特集・インタビュー
【5】interview with agraph - その“グラフ”は、ミニマル・ミュージックをひらいていく | アグラフ、牛尾憲輔、電気グルーヴ | ele-king

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