アニメと日々を見聴きする。

アニメの感想/考察中心に、長文を記録しておきたくなった時に記録するブログ。劇伴音楽関連の話題が多いかもしれません。

自分のアニメ劇伴との出会いを振り返る雑記

普段よくアニメの劇伴の話ばかり考えていますが、昔と比べて結構好きな劇伴の傾向も変わってきたなと思い、いくつかの印象的なアニメ劇伴との出会いを昔から振り返ってみようと思いました。

「好きなサントラの話書きたい」というだけの記事になってる気もしますが。

アニメと出会った頃-「エヴァ」「コードギアス

自分がアニメ作品を見始めてから、10年も経っていないと思います。

アニメを見始めた頃に誰もが通る作品、というのがあるような気がしますが、私も御多分に漏れずそれらに出会いました。
音楽が印象に残ったものを思い出してみると、

新世紀エヴァンゲリオン

コードギアス

やはりこのあたりでしたね。


エヴァの方に関しては、「とりあえず有名だし見てみるか」ぐらいの感じで視聴し始めた訳ですが、肝心の内容について当時の自分がちゃんと理解できていたのかどうかはあまり定かではありません(笑)。まあ今見ても隅々まで理解できるかどうか怪しいですが…。エヴァは有名ですが、アニメ初心者にとっては最初から高いハードルに挑みすぎたような気もしますね。
それでもやはり、今までに見たことのない世界観に圧倒され、アニメの世界へと引き込まれたのは確かです。

そして鷺巣詩郎さんによる音楽ですが、やっぱり、カッコイイですよね。やっぱり戦闘音楽はいつの時代も士気が上がるしカッコイイものです。例えば、物語冒頭に使われる「ANGEL ATTACK」

ANGEL ATTACK

ANGEL ATTACK

  • Various Artists
  • アニメ
  • ¥250

この曲全編に渡って繰り返される低音のパターンが侵略感あっていいですよね。 他にもヤシマ作戦の曲とか新劇場版の方もかっこいいのたくさんありますけど、とにかくこんなに派手にパパパーンとファンファーレが鳴るような、ダイナミックで自由な曲が許されるんだ、と当時思いましたし、それが映像にフィットするのもアニメの自由な世界観あってこそなのかな、とますますアニメに魅力を感じていました。



それからコードギアスについては、ご存知のように超強力なエンターテインメント性を持つ作品で、去年秋からも劇場版の上映が始まるなど今でも根強い人気がありますよね。こちらもやはり有名だからと見始めた訳ですが、とにかく話の展開が面白い。全52話ほどあるわけですが、どんどん次が見たい次が見たい、となってしまう上手い"引き"を毎回見せてくる作品でした。


こちらの音楽は中川幸太郎さん。谷口悟朗監督作品では度々担当されています。同じことを繰り返すようですが、やはりカッコイイ音楽に当時惹かれていたのだと思います。
一番カッコイイ曲を挙げてくれ、と言われたら「in justice」になるかな〜と思います。

In Justice

In Justice

大抵はランスロットが出撃準備をしてる場面ですが、戦闘音楽よりも戦闘準備の段階の曲の方が格好いい事ってありますよね。金管メロディーの裏での弦楽器の動きが地味に良い。cm明けのアイキャッチでパパーン!と入ってくる使い方が好きでした。


こんな感じで私のアニメ黎明期の頃の劇伴音楽嗜好は、例えば上記のような作品の影響を受け、かっこいい/派手で華やか/スケールの大きい、そういった好みだったかなと振り返ります。また、上記のような作品のインパクトもあってか、SF系のアニメを好んで見ていたように記憶してます。

2つのターニングポイント-1「空の境界

アニメの面白さに気づいた後は、徐々に様々な作品へ手を伸ばしていくわけです。

正直、自分がどういう順番でアニメ作品を見ていったかなど細かくは記憶できていないですね。なんか記録でもとっておけばよかったかなあ。*1


しかしその中でも、特に印象に残った作品はいくつかあり、自分の中でなんらかのターニングポイントになっているかもしれないです。
アニメ劇伴という観点で自分にとってのターニングポイントを一つ挙げるならば、これは間違いなく劇場版作品「空の境界になります。

奈須きのこさんによる原作小説が、ufotableさんの手によって全7章(+終章も)の劇場版として連続公開されるというものでした。私はリアルタイムで足を運べていないので、DVDなどでこれを見ました。

音楽担当は梶浦由記さん。この「空の境界」の音楽にとても衝撃を受けたのを覚えています。どこまでも映像とマッチして作られた音楽。何よりも、あの幻想的で美麗な映像に負けない、むしろ音楽の側からそこにある空間の空気を演出しているんじゃないかと思えるほどの曲の色の濃さ。アニメにおける劇伴の魅力を体感するには十分すぎるほどの作品です。

the Garden of sinners-劇場版「空の境界」音楽集-

the Garden of sinners-劇場版「空の境界」音楽集-

何より、メインテーマがものすごく偉大だなと思うのです。1章から終章まで通して必ず現れる"空の境界のテーマ"と言えるあのメロディー。純粋にメロディーラインがとても綺麗…と同時に、全部で8作のシリーズ全てに登場し、その度如何様なアレンジにも耐えうる柔軟性の高さ。こんなに物語にマッチする曲があるか!?と思います。 また劇中の音楽も、常に分かりやすくメロディーがある様な曲ではなく、ほとんど効果音に近いようなものも多用されていて、音で空気感を作る手段の多彩さにも驚きました。 また、曲調の切り替わりなどと映像の進行が極限までマッチするよう調整されている所にやはりとても驚きました。4章で橙子さんが指パッチンするあたりのタイミングの取り方とか好きです。


空の境界」における梶浦由記さんの音楽は、純粋な曲の美しさ/妖しさの魅力もさることながら、それが劇中の要素とどう絡み合うのか?という面白さに気づかせてくれたものでした。
また、ある程度"濃い"曲であってもそれを包容できるアニメの世界観の懐の深さというものに、改めて気づいた作品でもあります。

ちょうど「空の境界」に触れた時期が「魔法少女まどか☆マギカ」や「Fate/Zero」が放映されていた頃で、それらも視聴して梶浦由記さんの楽曲を好むようになっていったというのは後日談。

2つのターニングポイント-2「涼宮ハルヒの消失

空の境界」と同じレベルで劇伴音楽が印象に残ったのが、劇場版作品「涼宮ハルヒの消失でした。
涼宮ハルヒの憂鬱」自体はアニメを見始めた最初の頃に視聴し終わっていました。TVシリーズにはわりかしポップな作品の印象を受けていたのですが、劇場版である「消失」はかなりシリアス寄りになっていて、音楽の方も物語序盤ですぐにフルオケ編成に切り替わって、TV版とは異なる空気を作り出してます。
冬の日のどこか寂しげな空気が常に画面を漂い、その中でもキョンが静かにアツく変化していく、名作中の名作だと思います。多分この作品の感想を書くなら別に一本記事を用意すべきなのでしょう。

サウンドトラックは、神前暁さんを中心としてMONACA所属の作曲家の方々が担当されています。

劇場版 涼宮ハルヒの消失 オリジナルサウンドトラック

劇場版 涼宮ハルヒの消失 オリジナルサウンドトラック

一つ一つの曲がとても充実していて、最後まで聞きごたえたっぷりです。時に快活に時に叙情的に自在に本編の内容を彩る名盤。今でもよく電車の中で聴いたりします。
中でも本編ラストで使われる「いつもの風景で終わる物語」のアレンジがものすごく楽しい。このアニメのテーマ曲と言っても過言ではない「いつもの風景」のオケアレンジですが、オーケストラの広い音色の幅が生かされ、例のメロディーがフルートから弦楽器、低音金管まで駆け巡り、裏ではハーモニーや対旋律が豊かな彩りを加えています。

いつもの風景

いつもの風景

(こちらはテレビ版になります)


また先ほどの「空の境界」と同様に、純粋な曲の素晴らしさだけでなく、本編の中での使われ方もとても印象深いです。今触れた「いつもの風景」のアレンジも、物語冒頭と最後部をサンドイッチするように使われていますが、冒頭のポップなアレンジから最後の豊かなオーケストラ の響きへの変遷が、まるで物語を通したキョンの内面の変化を体現するかのように感じます。他にも、各シーンでの音楽の有無の取捨選択、キャラクターごとの曲による特徴づけなど、劇に寄り添って丁寧に考え設計されています。このサントラに本編未使用曲が多い所からも、そういったディレクションに関して色々と想像が膨らみ、楽しいです。


ともかく、この「涼宮ハルヒの消失」も、先ほどの「空の境界」と同じく、"アニメでの劇と曲の関係性"の面白さを自分に提示してくれた重要な作品なのだなと改めて思い出します。

違う方向性-「響け!ユーフォニアム

上記二作品の影響もあり、アニメ劇伴という物に興味を持ち始めたのはわりかし最近でした。 色々な作品を見て、気になったものはサントラもチェックしてみたりという日々が続きましたが、やはりそれでも自分の嗜好は大規模、華やかな曲に寄っていたかなと思います。

ただここ数年でそこに一石を投じるような作品に出会いました。それが響け!ユーフォニアムです。

吹奏楽部を舞台にした青春モノですが、高校生の人間関係を細やかに描き、一方で吹奏楽部のドキュメンタリーのようなテイストもあり、宇治という土地に漂う情緒そのものも楽しめたり…様々な匂いのする作品だと感じます。 京アニ×音楽モノ+主人公4人組ということで、放映前は「ていおん!」などと冗談を言われたりもしていましたが、始まってみればストイックな部活のありのままがそこにはありました。

この作品の音楽は松田彬人さんが担当されました。劇中の吹奏楽曲の作曲まで松田さんがされているんですよね。

吹奏楽をテーマにした作品ということもあり、作中の演奏との棲み分けを図るために管楽器を用いずに作曲がされているのがこのサウンドトラックです。そのため、基調は弦楽器とピアノによるアンサンブルとなっていますが、その中でも作品の空気に沿った様々な曲の顔が見られます。特に「運命の流れ」はとても好きな曲で、TVシリーズ第1期の空気感を作っています。

運命の流れ

運命の流れ

ピアノと弦の音が、作品全体を通して真っ白なキャンバスとして有り、そしてその上に主人公たちの吹奏楽の音が乗る、そのように感じます。良い意味で、作品の背景となる曲が多いと思います。


自分にとっては、このサントラ/ユーフォというアニメを知って、小さめのアンサンブルによる劇伴もいいな、と思うようになったのが大きかったです。
今までは、オーケストラ編成で大規模だったり、曲の存在が背景というより前景まで浮き出てくるようなものを好んでいたのですが、ユーフォのようにそれとは反対の方向性も良いなと感じるようになったのです。
ただユーフォの劇伴も、ただ背景に隠れているだけで印象に薄いかというとそうではなく、確実に印象には残るわけです。このあたりは、音響監督による選曲と配置の技術も大きいのかな、などと思ってます。

そこで、曲を印象的にするための選曲の工夫という観点にも少し興味が出始めてきました。このブログでも、その一端でも探れたら良いなと思いそのような文章を書いたりもしました。(参考記事)


アニメのジャンルの好みの変遷も多いに関係あると思います。やはり青春モノのような、登場人物の細やかな感情の揺れこそが肝となるようなアニメでは、劇伴音楽もそれに寄り添うような楽器やアンサンブルの規模で作られる気がします。



さて、ひと通り印象深いいくつかの劇伴を振り返って見ました。特に結論的なものがあるわけではないんですが、大雑把にまとめれば、昔は大規模/華やかなのを好んでたけど最近は繊細なアンサンブルも良いよな〜と思うようになりました、というまとめになろうかと思います(雑)。
それだけでなく、劇と曲の関係性という点について興味が現れてきたりしたのは、やはり「空の境界」や「涼宮ハルヒの消失」あたりの影響が大きいかも。


自分は知ってるアニメ作品の幅もまだまだ狭いですし、これからも色々な作品と出会って行きたいです。
良い作品との出会いがあれば、自然と良い音楽とも出会えるでしょう。

*1:このブログはそういった"記録"の意味も込めて始めてみたものでもあります