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響け!ユーフォニアム2 第11,12話をサウンドトラックで振り返る-劇伴音楽使用シーンまとめ

テレビアニメ響け!ユーフォニアム2 本編において、
どういうシーンでどのBGMが使われたのか?
を各話ごとに整理し、それに沿って各シーンや曲を振り返るシリーズ記事です。


今回は第11話、第12話を振り返ります。
前回(第9話、第10話)はこちらからどうぞ。
次回(第13話)はこちらからどうぞ。


前回までより肩の力を抜いて書いたので、肩の力を抜いてご覧ください。

第11,12話 ストーリー-サウンドトラック収録曲対応表

今回は第11話「はつこいトランペット」及び第12話「さいごのコンクール」です。劇伴使用シーンのまとめは以下の画像のようになりました。

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※鳴り始め・鳴り終わりは、各話開始時点から測った時間です。

曲番号は、 TVアニメ『響け!ユーフォニアム2』オリジナルサウンドトラック「おんがくエンドレス」に準拠し、
(ディスク番号)_(トラック番号)
を意味します。 例えば"1_5"なら、「おんがくエンドレス」のディスク1の5曲目を指します。
[注]Ⅰ_1_28のようにローマ数字のⅠがついた番号は、響け!ユーフォニアム第1期のサウンドトラック「おもいでミュージック」からの使用曲となっています。



第11話では、麗奈と滝の話が掘り下げられ、麗奈が全国大会への決意を新たにします。そして第12話ではいよいよ全国大会本番です。

第11話

麗奈に話しかける久美子と「突き進むべきである」

下校時に麗奈に話しかける作戦を立てるも、失敗に終わるシーンのBGMは「突き進むべきである」でした。

突き進むべきである

突き進むべきである

以前は学園祭の久美子たちのクラスの出し物のシーンで使われていた曲で、低音1年生たちの日常パートといった雰囲気の曲だと思います。


なんか久しぶりに肩の力をある程度抜いて見られるシーンな気がします(笑)

久美子のイメージトレーニングのくだりとか、どこか雰囲気も第1期の初期の頃を思い出すようなテイストになってるような気がします。

ちょっとよそよそしい話しかけ方は、まだ久美子と麗奈が疎遠だった頃を思い出します。

職員室で滝の奥さんの話をきく麗奈と「背中を押すもの」

職員室で麗奈が滝に奥さんのことを尋ねるシーンでは「背中を押すもの」が使われました。

背中を押すもの

背中を押すもの

滝は初め、第6話で久美子に車の中で話したのと同じく、”北高の生徒だった、顧問をやっていた”など、妻に関する事実を麗奈に話します。
しかし、「どんな人だったのか」とさらに踏み込む麗奈に対し、"余命が宣告されて頭が真っ白になった"という、滝の直接の気持ちが言葉として引き出されてきます。


ここまで滝の心に一歩踏み込む事は、第6話で久美子には成し得なかった事です。
久美子ではなく、滝へ恋愛感情を抱く麗奈だからこそ、その滝が好きだった人の事を理解しなければと思うからこそ、質問できてしまったのでしょう。


全国にいくため、気持ちの整理をつけるためなら徹底的にやる。
滝も麗奈もお互いに傷つくと分かっていてあえてそこに踏み込む事を選ぶのは、やはり麗奈らしいと思います。

麗奈の背中を押したのは、大吉山での"私応援してるよ"という久美子のセリフだったのでしょうか。

麗奈のお墓参りと決意、「吹き抜ける風のように」

麗奈と久美子が滝の奥さんの墓参りをし、金賞を取る決意を新たにするシーンでは、「吹き抜ける風のように」が使われました。

吹き抜ける風のように

吹き抜ける風のように

いや〜、自分が好きな人(しかも先生)の、その奥さんの墓参りまでを成し遂げる女子高生って、すさまじいなあ……と初めて見たときは思いました。
普通そこまでできる人いますかね……


墓参りをする麗奈と、向こうにそびえる山脈、少し青い白い空と日の光。
なんだかすごく神々しいような絵に見えます。


滝の奥さんの夢を知った上で、滝の夢でもあり奥さんの夢でもあった全国金を叶えたい、と改めて決意をする麗奈には、もう心の曇りはないでしょう。
そう話す麗奈の、顔の影に日が差し込んでくる演出はとても綺麗です。

第12話

一同に集う各校と「一途な瞳」

全国大会会場に集う強豪校や本番前の部員の様子が映し出されるシーンでは、「一途な瞳」でした。

一途な瞳

一途な瞳

第5話の時も出てきた、本番前・決戦前BGMです。

この曲を聴くと、バラバラな場所から色んな人が、コンクールという一つの目的の元に集ってくる感じが出て、すごく好きです。
1期2期のサントラ全てを通して、一番"コンクールっぽい" 劇伴音楽だと、個人的には思っています。

実際このシーンも、一つのコンクール会場に様々な強豪校が全国各地からやってきていて、さあいよいよ本番が始まるのかと士気の高まるのを感じます。
こういう時はコンクールオタクの緑の出番ですよね。いつにも増して生き生きと解説をしています(笑)

そして北宇治も、チームもなかを含めそれぞれが着々と準備を進めていきます。

全国大会の舞台裏と「重なる心」

舞台裏での久美子とみぞれやあすかのやりとりから、本番の演奏までのシーンに、「重なる心」が使われました。

重なる心

重なる心

他でもない、響け!ユーフォニアム」のメロディーの元ネタ曲ですね。あすかと久美子の会話に重ねて流すのもニクい演出です。
みぞれも最高のリードを用意しているみたいです。


ところで、このシーンのテレビシリーズの中での立ち位置は、かなり異色で面白いと思います。

というのも、1期最終話・2期第5話の、京都大会・関西大会本番の舞台裏待機シーンでは、ちゃんと前の学校の演奏の音が聞こえていたんですよね。
それぞれ、「シェヘラザード」ダッタン人の踊りでした。

交響組曲「シェエラザード」より -Highlights-

交響組曲「シェエラザード」より -Highlights-

  • フレッシュマン・ウィンド・アンサンブル
  • アニメ

ダッタン人の踊り

ダッタン人の踊り

それがこの2期第12話では、前団体の演奏の音が一切流れて来ず、代わりに劇伴音楽「重なる心」とともに舞台裏の様子を描く、という風に処理されています。


これはかなり冒険だなと私は感じました。

というのも、久美子たちのいる舞台裏に響くはずの前団体の演奏の音が聞こえないという事は、舞台裏のリアリティーや臨場感をある程度犠牲にしていくことになると思うからです。

そしてそれなら、このリアリティーを犠牲にしてでも描きたかったものが、このBGM「重なる心」と久美子達の会話に表れているはずと私は思うのです。


それが何なのか。
残念ながら私は、「これだ!」というような意見は言えないのですが……


一つ可能性として考えられるのは、あすかと久美子それぞれに、自分の演奏を届けたい相手の存在があるという事を、もう一度はっきりと描きたかったのではないか、という事です。
(もちろん、進藤正和さんと、麻美子の事です。)

「重なる心」は、あすかと父の関係にとって大切な曲「響け!ユーフォニアム」の元になった曲ですから、あすかにとっての父の存在をもう一度強調する目的で、前団体の演奏の音を犠牲にしてでもBGMとして入れる価値があったのかもしれません。



本当の所はスタッフさんに聞きでもしないとわからないかもしれないですね……



演奏シーンについても、京都大会・関西大会と異なり演奏を全カットという方法を取り、他の2回のコンクール回と区別されています。

ただし、全国大会での演奏シーンは、あすかの想いが父へと伝わる瞬間、言わばあすかにとっての物語の頂点でもあるわけです。
そこをカットした事については、よりあすかの気持ちがフィーチャーされた劇場版で補完されたと考えればいいのかなあ、などと個人的には思っています。



このように、今回は全体として、「コンクールの話なのに、演奏の音を一切視聴者に聴かせない」というのがかなり異色だと思います。
その点で、京都大会や関西大会とはテイストの違うコンクール回になっていると思います。


なんにせよ、“コンクールの演奏シーン”という、同じ事を同じアニメの中で3回もやるというのは、非常に難しい所だろうなあと思います。
(もちろん、その中でも細かい演奏の違いなどがちゃんと作られているのですが。)

久美子と麻美子の対話と「平穏なる日々」

久美子が麻美子を追い、そして大好きと伝えるシーンでは「平穏なる日々」が使われました。

平穏なる日々

平穏なる日々

お姉ちゃんがいたから吹奏楽が、楽器が好きになれたんだ、そして何よりもお姉ちゃん大好きだよと、久美子が言葉で伝えます。それに対して、麻美子も大好きだよと返します。
久美子と麻美子の間の物語の完結編ですね。


このシーンには、1期第12話の「ユーフォが好きだもん!」という久美子のセリフとの対比の意味もあるかな、と思います。
このセリフは、他でも無い麻美子から、音大いくつもりもないのに部活を続けて意味があるのかと、問われた事への答えでした。

この2期第12話でも再び久美子が麻美子へユーフォが好きだと伝えるわけですが、1期第12話との違いは、やはり久美子と麻美子のお互いへの理解が深まっている所にあるでしょう。
ユーフォが好きだという気持ちの源流にある麻美子の存在を久美子が自覚し、麻美子の方も自分に憧れていた久美子の気持ちを汲み取っているからこそ、”ユーフォが好き”と言う同じ言葉を再びやり取りする事に意味が生まれるのだと思います。




やっぱりコンクール回は1期のサントラ多かったですね。今ではお馴染みとなりました。
さて次回はいよいよ卒業だ……

そして、次の記事が始まるのです。 ->第13話はこちらから