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【感想】響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 ネタバレ読後感

この度「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章」前編/後編を全て通して読了しましたので、簡単に読後感を残しておこうと思います。


当然ネタバレ全開で書きますので、未読の方はご注意ください。


まだ十分内容を吟味できていないため、この記事では深くつっこんだ考察とかは無いですが、読み終わって間もない新鮮な気持ちを綴ろうと思います。


作品のテーマとして感じた事「うまい人とうまくない人」

相変わらずこの「響け!ユーフォニアム」はエグいところにスポット当てていくなあ…(笑)というのがこの作品の第一印象でした。


この作品の”エグい”テーマの一つとして、「楽器がうまい人とうまくない人」の二者が互いに抱く感情、というものがあると思いました。
それは例えば「一方からもう片方への嫉妬」として描かれていました。
どす黒くて、人間の持つ醜い部分を浮き彫りにしていくようなテーマでした。


"あいつは演奏上手くて、あいつはそんな上手くないよね"という部内の評価って、嫌な物だけれどでも確実に存在するものだと思います。
毎日一緒に練習して一緒に合奏していれば、一人一人の演奏が耳に入ってきますから、嫌でもそういう線引きが形成されてしまうと思うのです。
でもそういう線引きって生々しくて直接表には出しませんよね。それを、奏や希美といったキャラ達によって顕在化させて正面から向き合おうとしたのがこの第二楽章だと思います。

相変わらずこういうチャレンジングな話題に挑むのはさすが響け!ユーフォニアムシリーズだと思いました。



前編の「うまい人とうまくない人」の対比は、奏と夏紀の間にあったと思います。
テューバパート内でも、さっちゃんとみっちゃんという二人が同じような対比をされてましたよね。こちらは久美子によって割と早いうちから解決されましたが。

“楽器はうまくないけど人気者”と”楽器はうまいがはみ出し者”。後者から前者への嫉妬とか、プライドとか、承認欲求とか、そういった物がひしひしと感じられました。



後編では、希美とみぞれの関係がこの対比に相当してると思います。
もちろん希美はコンクールメンバーにも選ばれてますし楽器が下手なわけではないんですが、ソロを通してみぞれと比較してしまうと、”うまくない側の人”に振り分けられてしまっています。

前編では”うまい側”から”うまくない側”への嫉妬が見られましたが、今度は逆で、”うまくない側”の希美から”うまい側”のみぞれへの嫉妬が描かれました。
個人的には、こちらの方がナチュラルな嫉妬で、前編で描かれてたような"うまい側"から"うまくない側"への嫉妬の方が、むしろ歪んだ代物かもしれないなと思いました。


みぞれより自分の方が音楽が好きなのに。
みぞれより自分の方が苦労してるのに。
でも、自分よりみぞれの方がうまい。選ばれた。


アニメ版の希美の顔を思い浮かべながら読んでると、あんなにカラッとした性格に見えていたのが、内側にこんなものを抱えていた事は驚きました。


演奏技術が高いだの低いだの、そこに生まれる嫉妬だのって、あまり直視せず逃げたくなる問題ですけど、臆さず切り込んでいって、そこに生まれる必ずしも綺麗じゃない感情を描くのが、「響け!ユーフォニアム」という作品の魅力だと思いました。



ところで”うまい人”と”うまくない人”っていう対立構図は、前作でも存在してたように思えます。
例えば、オーディションでの久美子と夏紀もそうですし、ソロオーディションでの麗奈と香織もそうです。

でも今回の奏や希美ほど、人のどす黒い部分があからさまになっていなかったような気もしますね。

ここらへんの違いとかも、今後読み返してちゃんと考えたいポイントではあります。

「黄前相談所」開設

第二楽章では、「黄前相談所」とも言われる通り、問題解決のスペシャリスト、頼りになる久美子像が出来上がってた気がします。
完全に久美子が無双モードに入ってたように見えました(笑)


一歩踏み込んで人にアドバイスしていく姿勢とか、前作最初の頃の久美子にはなかったものですし、これはやはり前作終盤でのあすかとの一件が大きいんですかね。
"あの"あすかを相手に問題解決できた久美子に、もう怖いものはない!みたいな雰囲気を感じます。


前編のクライマックスに相当する奏との対峙でも、

「やっぱり奏ちゃんは甘いよ」

というセリフから溢れ出る強キャラ感…(笑)
あすかの仮面の厚さを知っている久美子が、生半可なことでは動じなくなっているのに貫禄さえ感じました。

あと個人的に、久美子と梨々花の絡みが地味に好きでした。あんまり場面多くありませんが。


そんな「黄前相談所」は実は優子部長の思惑で、久美子は下級生からの信頼も厚いままに部長に就任しました。
この久美子が部長になって、これから一体どんな困難を背負っていくことになるのか。
今までは"無双"できてた久美子にとっても、より大変な道が待っているに違いありません。

リズと青い鳥と、希美・みぞれ

いや怪しいと思ってたんですよ。
本当にみぞれはリズ側なのかって。いや本当ですよ?(←読み終わってからならなんとでも言えますね)


まさか「みぞれ=青い鳥」という見方になっていくとは。


前編を読んでいる時、久美子が「リズと青い鳥」の原作を読むシーン(前編 P.244)などで、「みぞれ=リズ」の等式が強調されてたりしてました。でもどこか引っかかりを覚えながら私は読み進めていました。

後編に入ると、まずプロローグで”誰かの悲鳴みたいな”というフルートの音の表現がありました。私は少し背筋が凍るような思いがしました。なにかおかしいぞ、と。
やがてプールでの久美子と希美の会話などを通して「みぞれ=リズ」の等式への疑念は深まっていきました。

本のページ数を半分超えたあたりで、読み進めるのがだいぶ怖くなりました。展開は知りたいけど、真実を知るのは怖い。そんな気持ちで読んでいました。


そして、合宿でのみぞれの覚醒。明らかになる希美の本当の気持ち。みぞれへの歪んだ執着心。
ここに至った瞬間、自分が希美という人物をいかに理解していなかったかを思い知らされました。

前作では「みぞれ→希美」への歪んだ感情を中心に描かれていましたが、今作ではその逆の構図である、「希美→みぞれ」への別の形の歪んだ感情もあらわになりました。
同時に、「リズと青い鳥」と希美・みぞれの間にあった対応関係も、みごとに逆転してしまいました。
前作からの流れを汲んだどんでん返しに、やられたなあ、と思いました。


また、覚醒したみぞれのソロは、文章で読んでいるだけのはずなのに、そして「リズと青い鳥」がどんな曲かも知らないのに、ガンガンと私の頭の中で響き始めました。
すごいパワーでした。正直今でも、このシーンを思い出すだけで涙が出そうになります。
ただ文字だけから伝わる音楽の力で人の心をこんなに揺さぶることができるのか、という衝撃がありました。


私はこのシーンを読んで、劇場アニメ化に対し、少しだけ不安を抱いてしまいました。


この衝撃的なみぞれのソロを、映像で、そして音響で、本当に表現できるのか?
この、心が震える感覚を、自分はまた劇場で味わう事ができるのか?
アニメはこのシーンをどう料理するんだろう?


もちろん、京アニさんのプロの技にかかったらどのような映像と音響が出来上がるのか、楽しみな気持ちもまた強まりました。

これはもはや、武田綾乃さんと京アニさんの一本勝負といったところでしょう。


そしてみぞれの変化、成長についてです。
自分からプールに友達を誘ったりとか、希美がいなくても音大に進む決意を決めたりとか、青い鳥のように一人立ちしていくみぞれに、とても驚きました。

やっぱりこういう変化の契機となったのは、「リズと青い鳥」という曲そのものなのかなあと思います。
リズと青い鳥」によって、前作で根本的に解決していなかった希美とみぞれの関係性が再び浮き彫りになってしまった負の側面もありましたが、結果的にはこの曲がみぞれの旅立ちを後押しする一つの契機として働いてくれた気がします。

コンクールの結果について

読んでる途中は、京都府大会の時から結構緊張してました。

バス移動中のシーンなどは、お前らフラグ立てるの頼むからやめてくれと思いながら読んでいました(笑)
京都大会は余裕でしょ、みたいな発言がフラグにしか聞こえません……
無事通ってよかったです。


関西大会に関しては…
正直、残りページ数で途中から察してしまった所はありますね…(笑)


全国に行けるのは当然ではない。少しでも足りなかったことがあれば、それが敗退に繋がってしまう。
そういった厳しい現実を久美子達が理解する結果となったと思います。

今年は最初から”本気で”「全国大会金賞」という目標を決めていただけに、その全国にすら行けずに終わってしまう悔しさが、読んでるこちらにまで伝わってきます。会心の演奏だっただけに、なおさら。


関西3強の牙城が崩され始め、乱戦模様を見せてきたここ数年の関西大会。 この乱戦を突破するのに必要なものとはなんなのか。それを3年生の久美子達が突き止めていかなければならないでしょう。

次回作への期待

まあ、「波乱の第二楽章」という題名からして、

第三楽章に続くかな?

という感じはしてましたが、やはり久美子達が3年生になった話に続いていくとみられますね。


“第三楽章”へ続く話のタネもかなりありました。個人的に気になっている事を挙げると、

  • 今後の夢の活躍(加部ちゃん先輩がいなくなって)

  • 求の話の掘り下げ

  • 梨々花の今後の活躍

  • 葉月はコンクールに出られるのか

  • 久美子秀一麗奈、執行部三人のチームワーク

  • アンサンブルコンテスト(アンコン)

  • 久美子達の進路、将来

などです。


アンコンに関しては、誰がどういうグループを組んで参加するのかが重要ですね。
これはファンの想像力をかき立てるところです。

木管や打楽器だとメインキャラが少ないから、金管アンサンブルの線が強そうですが…。



個人的には3年生になった葉月のコンクールメンバー争いにも注目したいです。
第二楽章のオーディション結果発表での葉月は、自分が落ちても後輩を激励してあげたり、少し気持ちの余裕を感じました。

しかし、3年生となればやはり事情は違うはず、と私は思っています。
3年生になった葉月がレギュラーを勝ち取るのか否か。楽器初心者としての葉月の闘いが見てみたいです。
万が一、落ちてしまったら。
今回も、前編の最後でトロンボーンの3年生がオーディションに落ちてしまう描写がありましたが、彼女のその後については詳しくは描かれませんでした。

どちらにせよ、そこにどんな葛藤が起こるのか、描かれればいいなあと期待しています。



それから、久美子3年生編となれば否が応でも将来の話をやらなければいけなくなるはずです。
卒業後の麗奈との関係の事(前編 P.318)や、生きていく意味の話(後編 P.160)とかも、この第二楽章では決着のつかないまま持ち越されています。

ここらへんがどう決着がつくのか。とても重いテーマだと思います。


あと剣崎さん活躍してほしいなあ。

アニメ化について

劇場版アニメ化がすでに決まっているわけですが、

希美とみぞれの話にどうやって絞るんだ?

と思いました。具体的には、

  • 映画「リズと青い鳥」で第二楽章後編の内容まで突っ込むなら、前編の内容にどれくらい触れるのだろう?

  • そもそもほんとに第二楽章の"単純な"映像化と考えていいのだろうか?前作の内容から含まれるのか?

などと、疑問が出てきます。

大穴として、劇中劇の映像化(北宇治の話ではなく「リズと青い鳥」そのものの映像化)だったりして…

liz-bluebird.com

それにしても楽しみです。
先ほど挙げたみぞれの覚醒演奏シーン始め、奏や求といったクセの強いキャラがアニメでどう表現されるのかなども注目したいです。
どの話をどれだけやるかが未知数ですがね。


この狂気と熱気の物語をどう映像化するか、原作と京アニさんの真剣勝負みたいなところはありますから、こちらも覚悟して待ってます。

さいごに

ということで、とりあえずの読後感を終了したいと思います。


他にも、

  • 奏という人物
  • 部長・優子と副部長・夏紀
  • 2年生になった麗奈の立ち振る舞い
  • 加部ちゃん先輩の存在
  • 卒業生たちのこと

などなど見どころはまだまだたくさんありましたが、またじっくり何度か読んで考えてみたいと思います。
またブログに書く事もあると思います。


劇場版アニメの公開も、俄然楽しみになってきました。
それでは。


↓↓以前に書いたユーフォ関連記事もどうぞ。↓↓

r-lin.hatenablog.com

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