響け!ユーフォニアム2 第6,7話をサウンドトラックで振り返る-劇伴音楽使用シーンまとめ
テレビアニメ響け!ユーフォニアム2 本編において、
どういうシーンでどのBGMが使われたのか?
を各話ごとに整理し、それに沿って各シーンや曲を振り返るシリーズ記事です。
今回は第6話、第7話を振り返ります。
前回(第4話、第5話)はこちらからどうぞ。
次回(第8話)はこちらからどうぞ。
記事後半が小笠原晴香特集みたいになってます。
第6,7話 ストーリー-サウンドトラック収録曲対応表
今回は第6話「あめふりコンダクター」及び第7話「えきびるコンサート」です。劇伴使用シーンのまとめは以下の画像のようになりました。 ※鳴り始め・鳴り終わりは、各話開始時点から測った時間です。
曲番号は、 TVアニメ『響け!ユーフォニアム2』オリジナルサウンドトラック「おんがくエンドレス」に準拠し、
(ディスク番号)_(トラック番号)
を意味します。
例えば"1_5"なら、「おんがくエンドレス」のディスク1の5曲目を指します。
[注]Ⅰ_1_28のようにローマ数字のⅠがついた番号は、響け!ユーフォニアム第1期のサウンドトラック「おもいでミュージック」からの使用曲となっています。
ついにOPがカラーになりました。
第6話では学園祭・久美子の家庭内の話・滝の事情など、もりだくさんながらも今後の展開に向けての種がまかれました。
そして第7話ではついにあすか編が本格的に始まります。
第6話
あすかと久美子の会話と「重なる経験」
あすかの教室の前で、あすかと久美子が他愛ない会話をするシーンにつけられたBGMは「重なる経験」です。
ここに限らず、学園祭のシーンは安心できるようなBGMが多くてオアシスですね。
ところで、この記事を書いている段階で13話まで一通り見返し終わっているんですが…
この曲、地味にこのシーン専用BGMのようです。
この後の展開を思えば、あすかと久美子が純粋に他愛ない会話をできる貴重なシーンだと思います。
「も〜あすかうるさい!」
と奥から出てくる晴香もかわいくていいですね〜
滝と久美子の花屋での会話、「郷愁から芽吹くもの」
台風の中の花屋で、滝と久美子が他愛のない会話をし、そして久美子が滝の指輪に気づくまでのシーンは、「郷愁から芽吹くもの」です。
でも生徒と先生がこういう”普通の会話”をできるシーンって、珍しいですよね。
でも久美子はなぜかこういう機会に恵まれてしまうのです。(しかも麗奈のいない所で……)
主人公特性ですね。
また、滝の事情を知った上で見ると、店員が結構エグい事言ってしまってますよね…
「娘さん?」
とか
「先生まだお若いですものね」
とか。
知らぬが仏とはこのこと。
滝の車で聞く妻の話と「そこに兆しは存在する」
滝の車の中で、久美子が滝から妻の話を聞くシーンです。
「そこに兆しは存在する」はこのシーンが初出の曲です。
勇ましく、着実に前進していくようなリズムがとてもシーンに合うと思います。 これは個人的お気に入り曲です。
滝は写真に写る妻の話を、事実だけをただ淡々と語りますが、自分の気持ちは自ら口には出しません。
想いを語らず、心の奥で静かに熱く燃やす姿がとてもカッコよいです。この回で滝の魅力がわかったような気がします。
滝もまた、全国を目指すべき理由を胸に秘めた一人のチャレンジャーという事がわかりました。
第7話
再びの”音楽モノ”回として、そして第1期サウンドトラック
「宝島」の演奏シーンをクライマックスに据えた第7話は、
"音楽モノ"として作られていると感じます。
コンクールとは直接関係ないとは言え、演奏シーンへの力の入れようは半端ではありません。
久美子達メインキャラクターの演奏だけでなく、サックスの運指やパーカッションの一人一人の動きに至るまでが生き生きと伝わります。
「吹奏楽部としての演奏、そして音楽そのもの」の魅力を最大限感じられます。
もちろん「宝島」での晴香のソロなどには、それまでのいきさつ、あすかへの想いと決意とか、"人間ドラマ"の部分が強く反映されていますが、一方であくまで純粋な"音楽モノ"としての側面をしっかり作ろう、という意図が今回強いと思います。
ここらへんは劇場版での鶴岡音響監督へのインタビューでも言及があって、
"この作品にはずっと音楽モノとして臨んでいる"
"今回は駅ビルコンサートで泣くぞと決めて作ってた"
というような発言がありました。(詳しくは、2017年のニュータイプ11月号をどうぞ)
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これを読んでも、駅ビルコンサートの話を、音楽モノとしての面に非常にこだわって作っている事が伺えます。
また、第7話のストーリー-サウンドトラック対応表を見てみると、
全ての曲が、第1期のサウンドトラックの曲から選曲されています。
このような選曲は、第5話の関西大会回でも行われていました。
特に今回はあすかの退部がちらつく不穏な回ですから、劇伴に第1期の”不穏な空気を出すBGM”がこれでもかというほど総動員されています。
第1期の劇伴音楽のみを選曲した第5話と第7話の共通点として、
吹奏楽部としての演奏をメインにすえた、"音楽モノ"回である
という点がみられます。
「2期の劇伴から1期の劇伴へごそっと入れ替える」
というのには、純粋な人間ドラマから、"音楽をやるぞ"というモードへ切り替える、そんな思惑があるように思えますが、具体的な意図は、正直私には分かりかねます。
直接監督とか音響監督とかに効いてみたいくらいですね。
香織・晴香の視点と「衝突」「青春の痛み」「去来する想い」
劇伴を使うという事は、曲によって何かを表現したりより強調したりする意図があると思っています。
そこで今回劇伴音楽の使われたシーンの特徴を見てみると、
香織や晴香の視点で物事を見るシーンが目立つ
と言えると思います。
これ以前の話数では、むしろ久美子の視点で話を追うシーンに劇伴音楽が伴う事が多かったと思います。(もちろん全てではありませんが。)
例えば6話です。6話で劇伴の使われたシーンのほとんどが、久美子の視点が絡むシーンであったと思います。
学園祭で麗奈やあすかと雑談したり、
家での麻美子と家族のシーンだったり、
車で滝の話を聞くシーンも、
久美子という聞き手を通して、我々は話を追ってきました。
第2,3話なども見ていくと、ほとんどに久美子の視点が絡みます。
実際、合宿で夏紀やみぞれ、優子といった人々から心の内を聞いて回ったのは、すべて久美子でした。
第7話でも前半は、職員室にあすか母が現れるシーンなど久美子の視点で見るシーンにBGMが使われています。
しかし7話の中盤以降では、劇伴の使われるシーンの中に、久美子の視点を完全に離れ、香織や晴香の視点を介して話を追うシーンが多くなってくるように思います。
これが、「衝突」「青春の痛み」「去来する想い」のシーンです。
これはそれぞれ、
香織と晴香があすかを問い詰めたり、
香織と晴香があすかの楽譜を眺めたり、
晴香があすかを支えようと皆に呼びかけたり
というシーンです。
このように3年生の視点から話を追うシーンに多く劇伴音楽が置かれています。これは第7話に特徴的なことだと思います。
さらにこれらは全て
”香織と晴香から見たあすか”
というテーマのシーンです。
まとめると、第7話はこれまでと一風変わり、香織と晴香の視点であすかを想うという点に重点を置いて曲が使われています。
そんな第7話ですが、香織や晴香の視点では、残念ながらあすかの本心に完全に辿り着く事はできません。
渡り廊下で晴香達があすかを問いただす「衝突」のシーンでは、最後まで晴香達にはあすかの本心が見えません。
映像を見ると、あすかの顔の見えないカットがとても多いです。
これまでに「久美子の視点」から見せていた”あすか先輩は分からないよ”という感覚が、「香織や晴香の視点」という違う角度からも強調され、強固になるのを感じます。
そしていよいよ8話以降、久美子がその強固な仮面の内の本心に踏み込んでいく、という流れと捉えられそうです。
この第7話、とても面白いです。
晴香にとっての”伝える”と「去来する想い」
今回の劇伴のシーンで特に盛り上がるのがこの「去来する想い」のシーンだと思います。
晴香が部長として、部員全員へ
“あすかに頼りっぱなしではいけない、私達があすかを支えるんだ、ついてきてほしい”
と語りかけます。
ほんとうに名シーンですよね。劇伴も、ちょっと部長びいきに使われてます。
ところで、”伝える”瞬間というのはこのテレビシリーズ第2期で常に印象的に描かれています。
第4話では、みぞれが希美へ、そして希美がみぞれへ想いを伝えます。
みぞれを救ってあげられるのは、希美にしかできなかったことだと思います。
後の第10話では、久美子があすかへ、「一緒に吹きたい」という想いを伝えます。
あすか個人に一歩踏み込み気持ちを伝えるのは、久美子にしかできなかったことです。
そして、今回の晴香のスピーチもこれらに並ぶ、”伝える”瞬間なのではないでしょうか。
晴香は、あすか個人に久美子ほど深く踏み込むことはできません。
その代わり、「あすかを支えよう」という想いを"部員全員へ"伝える事ができるのは、部長である晴香にしかできないことだと思います。
部長にしかできないことが何かを理解し、それを実行に移せる部長としての晴香は、もう第1期最初の頃の晴香ではありません。
そして、この部長・晴香の想いは確実に部員全体へと伝わっています。
それは、晴香のスピーチ中に映し出される一人一人の部員の表情をみればわかる気がします。
だからこのシーンは、
部長という立場にとっての、”伝える”の一つのあり方
だったのかな、と思います。
それにしてもいいシーンですね(泣)
駅ビルコンサートと「宝島」
そしてついに駅ビルでの「宝島」の演奏シーンです。
京都駅ビルステージで演奏会という、サブタイトル通りのシーンです。
ベース持ちのサファイアをじっくり観れるのも見どころ。
そして吹奏楽のポップスステージといえばコレ、なスタンドプレー。
立ち上がって左右に揺れる揺れる。
テューバは座ったままなのが細かい。
ナックル先輩のドラムもかっこいい。
そして晴香ソロの脅威のうまさ。うますぎてにやけますね。これがギャップというヤツですかね。
久美子も目を見開いてびっくりしてます。
晴香は公式プロフィールでも、
好きなもの : こってりしたもの、ラーメン、焼肉
嫌いなもの : ふわふわしたもの、ワッフル、パンケーキ
という、
すごく見た目に反する
感じになってますから、見た目とのギャップが基本的にものすごい子ですね。そこがいいですね。一緒にラーメン屋いきたい。
ところで、以前この駅ビルを聖地巡礼したことがありまして、実際見ると、観客が座ってる階段が、相当上まで長くて遠いなあと感じます。
相当頑張って音出さないと聞こえなそうです。
ですから、ソロの最後で晴香がすっごい頑張って音を飛ばそうとしてるのもうなづけます。こういう細かい所も、スタッフの現地取材の賜物だと感じます。
やはり演奏シーンにはこのアニメの魅力が詰まっています。
ぱったりと使われなくなった「陰る心」「落ちきった心情」
「陰る心」や「落ちきった心情」といったシンセサイザー主体の曲は、みぞれの内面を描くような場面で使われることが多かったです。
(参考、以前の記事)
しかし、第1話から第4話ではしばしば使われていたこの2曲は、第6話以降ぱったりと使われなくなっています。
これはやはり、希美との和解を果たしたみぞれの心にはもう曇りはない事の表れではないですかね。
追記 10/29 : 本当に完全なる和解なのか?という所に、疑問符を持った方がよいかもしれませんね。これらの曲が使用されなくなった事は、もっと単純に"2年生編"から"あすか編"への切り替えと考えるべきかもしれません。
そして、私たちの記事は続くのです。 -> 第8話はこちら
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